SはSweetsのS



ジャッジメントの事務所の一角に、よくできた飴細工が置かれている。
長髪、セーラー服姿の少女像は、佐天涙子そのものだった・・・。

「初春、どこに現われるか、まだ予測できませんの?」
白井黒子が焦る気持ちを、初春飾利にストレートにぶつけた。
その後ろでは、御坂美琴が爪をかみながら、無言で立っていた。
「できました。犠牲者のみなさんがみつかった地点での防犯カメラや目撃情報を分析すると、この中学付近です!」
「よくやったわ。では、お姉さま、ご一緒に。」
次の瞬間、美琴と黒子は姿を消していた。

バレンタインデーの翌日から、学園都市では奇妙な事件が報告されていた。
中高生が何人も、飴、チョコレートやマシュマロに姿を変えられていた。
当初は、ホワイトデーの宣伝のためのつくりものとみなされたため、
「お姉さまをかたどったキャンディがあれば、黒子はなめて、なめて、なめ尽くしますわ!」
などと錯乱して、電撃をうけた者もいたという(笑)
しかし、モデルとされた生徒たちが行方不明になっており、検査の結果本人であることがわかると、学園都市はパニックした。

瞬間移動をした美琴と黒子の目の前には、パーカーを目深にかぶり、デニムをはいた小柄の人物が立っていた。
「英雄常盤台来了。改変糖果!(常盤台のエースが来たわね。飴になれ!)」
「え?なに?」
白い光につつまれた美琴の足元、指先から、ゆっくり状態変化がすすんでいく。
黒子は止めることができず、ただ見ていることしかできなかった。
驚きの表情で固められた、等身大の飴細工がそこにあった。

「どうしてこんなことをなさるの?」
黒子は動揺をおさえて、つとめて冷静に相手に問いかけた。
「バレンタインデーの日、わたしをふった日本人を、どうしても許せなかったの。
激しい憤りの気持ちが全身をつきぬけたとき、この能力がめざめていた。
もちろん、最初に姿をかえられたのは、その男なのよ。」
パーカーのフードを脱いだなかから、ショートカットの少女の頭があらわれた。
「え、女?日本語?」
「私は、リ・メイリン。大連からきた交換留学生なの。父が貿易商だから、家でも学校でも、日本語をつかってきたわ。」
といって、少女が誇らしげにメガネに指をあてた。
「そう。コミュニケーションがとれる相手なら交渉しましょう。あなたの能力は人を変えるだけでなく、戻すこともできるのかしら。」
「ええ、簡単よ。返回。(戻れ。)」
指をパチンとならすと、元の姿で美琴が立っていた。
「黒子?わたしどうしちゃったの?」
「お姉さまは気になさらないで。メイリンさん、この学園都市にようこそ。あらためてあなたを歓迎しますわ。」

それからの数日、美琴は黒子とメイリンのコンビプレーに悩まされた。
更衣室で、シャワールームで、いきなり全身を変えられ、なすがままにされた。
それは、2人のコンビがうっかり寮内で能力をつかい、寮監に技をかけられるまでつづいたという。

「初春、わたしも失恋したら、能力がレベルアップするのかなあ?」
「佐天さん彼氏なんていましたっけ。あ、でも、彼氏できたら、パンツ見られなくてすむかも。」(終)


(注)このショートストーリーは、アニメ「とある科学の超電磁砲」のパロディです。

(2013年3月16日掲載)



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