ヴェルーシュカ
1987年に出版された写真集を近所の公共図書館で見つけた時、これは何なのか理解できなかった。
木の扉の中から女が浮かび上がっている。顔から指先、胸、太ももに至るまで木目を全裸にペイントしたのだ。
ほかにも男物のスーツを肌に描いたり、全身サビ色に染まり口から鉄パイプを生やしたり奇妙な写真が続いた。
モデルのヴェルーシュカは1939年東プロイセン(現在ロシア領)生まれ、父親がナチス倒閣に関わり、戦後も住まいを転々とした。
このような境遇から、「わたしの興味は、背景のなかに溶け込むことにしかない」(前記写真集)という嗜好を持つに至ったとされる。
1989年TBSで放映されたドラマ「ポルノ女優小夜子最後の冒険」のなかで、同じようなペイントが出演者にほどこされたのを覚えている。
2008年に英語版の全集"Veruschka"(Editions Assouline2008.9)が発売された。
参考文献:『ヴェルーシュカ』(リブロポート1987年発行)、『身体・表現主義』(アトリエサード2003年発行)(TH叢書)
(ブログ「我夢雑報」2009年1月17日掲載「ヴェルーシュカ」)
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